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2009年10月15日 (木)

物語(10)--新しい世界3

午後は趙さんと一緒に仕事をすることになった・・といっても、ほとんどついて歩くだけだ。
最初の仕事は水が流れっぱなしで止まらない便器の修理。
趙さんはチョロチョロ流れの止まらない様子を見て、
「こりゃピストンバルブを換えなくちゃ」といって、機械室の材料のある棚まで僕を連れて行ってくれた。
「便器にはピストンバルブとフラッシュバルブがある」と実物を説明してくれた。
再びトイレに戻って
「まず止水栓を止めないと洪水になっちゃうからな」と配管途中のキャップをあけた。
その中にねじ山がある。そんなところで止めるなんて初めてみた。
考えてみたら、どのトイレもこんな形をしているのだった。

趙さんは慣れた手つきでピストンバルブをはずした。
「この小さな穴にゴミが詰まるとバルブが最後まで降りないで流れっぱなしになるんだよ」
といいながらゴミが他にないのを確認してから新品バルブに換えた。
「どれ、流してみて」
僕はレバーを押したが今度は水が流れない。
趙さん
「止水栓をあけないと・・・」と笑いながら言った。
--あははっ
と僕も笑いながら止水栓を開けてからレバーを押した。
「大便器の水は標準で10秒で15リットル流れるようにするんだ」
僕は頭の中で10秒数えた。そうしたら今度はしっかり止まった。
「これでもうトイレは直せるね」
と言われたけど・・・

それからリハビリ室に行った。
リハビリ室の隣には細長いプールがある。
階段がついていて何でも歩行訓練をするのだそうな。
設備の仕事はそのプールをきれいに保つこと。
そのために水を巡回させてろ過している。
そのろ過する機械を定期的に点検するらしい。
「珪藻土をいれるよ。その前に逆洗浄しないと」
と、また慣れた手つきで機械のレバーを操作していた。

「あと、細かいことは少しずつ説明するから、先に休憩に戻ってていいよ。」
--そういえばもう午後3時か。
と廊下をあるいて戻っていると職員の人に呼び止められた。
「ここの壁にさっき、台車をぶつけてコンセントが割れちゃったのよ。直してくれる?」
見ると確かにコンセントの一部が砕けている。
--はい。
と、僕は設備係の机まで戻って係長に報告した。
吉沢係長は「金田君は電気工事士の資格持っていたよね?一人でできそうかい?」
--まあ、そのくらいなら。
と、休憩時間はどこへ行ったのか、僕は先ほどの機械室の棚にいって
道具箱の中身を調べて、電気部品のありそうな棚を探して、やっとコンセントを探し、
しまった!テスターも忘れないようにしないとな・・・で付け替えた。
--電気の修理もあるとか加藤さんが言っていたけどこういうことだったのか・・・
--とにかく、初めて一人で仕事を終えたのは何となく満足。
そう思いながら片付けていると、さっきの職員の人がちょうど通りかかり、
「ああら、もう直してくれたの。ありがとう!」
と言ってくれた。昔、電気工事の会社で働いていたときは建築中の建物が多かったので
誰にもお礼なんていわれたことなかったので、そんな一言で嬉しかった。。

”仕事とは何のためにやるのだろう”
少しだけ僕にとってのヒントが見つかったような気がした。

それからちょっと趙さんの仕事を手伝うというか見学しているうちに17時になった。
今日は時間が経つのが早い。
帰りに係長から今日の給料を渡された。
本当は日払いでないはずだけど、きっと加藤さんが僕がお金のないのを知って
係長に頼んでくれたんだ、と思った。

--今日はカップラーメンでなくてコンビニの弁当で夕食にしよう。
--缶ビールも1本買おうかな?
と思った自分は、今日だけで辞めるのはいつの間にか忘れて明日も仕事に来るつもりだったことに
気づいた。アルバイトには何となく良さそうな職場だからしばらく続くかも。。

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