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2009年10月18日 (日)

物語(11)--毎日勉強

次の日は当たり前のように福祉センターに行った。
午前はまた加藤さんと電気室や機械室の点検。
ん?加藤さんの教え方が昨日と違うぞ?
実は明日から一人で点検するようにポイントを説明してくれているのだった。

昨日僕とオセロをやった車椅子の小学生--小俣君というのだそうだ--がまた今日も
顔を合わせたら聞いてきた。
「今日も昼休みに遊べる?」
--オセロはもっと勉強してからだ。将棋ならいいぞ。
(中学校時代、実は僕はクラスで一番将棋が強かった)
小俣君は「将棋でも良いよ」とあっけなく答えた。
--あの生意気なガキ
って、彼はどうして学校に行ってないのだろう?

それはともかく、今日は水質検査の日だそうな。
各給湯設備の温度を測る。
なぜなら55度c以上で給湯されていないとレジオネラ菌の発生の可能性があるそうな。

(注:レジオネラはアメリカの「在郷軍人」を表す英語に由来する。
1976年、アメリカ、フィラデルフィアのホテルの冷却塔から宿泊していた在郷軍人が感染した。
本来は土壌中に生息する菌であるが、条件によっては水中にも生息する。水温55度で完全死滅する。)

加藤さん「給水の残留塩素も調べるんだよ。ビル管法では遊離残留塩素の場合1ppm以上ないといけないことになっているからね」
--そんな単位もあったっけな・・・
「ppmはparts per millionの略、すなわち100万分の1だね。」

加藤さん「ボイラーではPH(ペーハー:ドイツ語読み)も測るんだよ。PHってわかる?」
--酸とアルカリですよね?
「そのとおり!potential of Hydrogen水素イオン濃度指数だね」
って、そんなことまで知るか!

とにかく試薬をつかって、館内の給水の塩素濃度もを調べて午前は終わった。

昼休みは久しぶりに、朝、コンビニで買っていった弁当をさっさと食べ、小俣君と将棋をやった。
オセロのときにはよくわからなかったけど、駒を持つ手つきは相当うまそうだ。
--でも、僕も将棋の本は何冊か読んで矢倉戦法とか振飛車とか知っている。小学生相手に負けるはずが・・
って、負けた(TT)
「おじさん、次は僕が飛車角落ちで構わないよ」
--ふざけるな!おじさんって呼ぶな!いくら何でも飛角抜きで負けるはずが・・・
って、手を抜かないで懸命にやったのにまた負けた。
そうしているうちに昼休みが終わって、部屋に戻ろうとしたら職員に呼び止められた。
「このドア、見て。ドアがゆっくりしまらないでバタンと閉まってうるさいのよね」
開閉してみると確かにおっしゃるとおり。でも僕に何をしろというの?知るかそんなもの!
加藤さんに相談してみるか。

部屋に帰ると、加藤さんはいなくて(昨日も午後は顔を合わせていない。何をしているのだろう?)
吉沢係長と趙さんが昼休みを終えようとしているところだった。
係長に
--ドアが急に閉まって、うるさいそうなんです。
と報告すると、隣で聞いていた趙さんが
「ドア・クローザーが劣化しているかもね。油漏れていた?」
--よく判りません。
「ドアクローザーのメーカーと大きさをメモしてきて。」
と言われた。
--そうか、あのドアの開閉部についているのがドア・クローザーというのか。
僕は現場に戻ってドア・クローザーが趙さんの言うとおり油が漏れているのを観察し、
大きさを測ってメモしてきた。

現場で趙さんは、ドアクローザーを確認しながら、「やっぱり交換だな」と言った。
僕は趙さんの手伝いをしながら一緒にドア・クローザーを交換した。
すると新品のドア・クローザにしたらとてもゆっくり閉まる。
趙さんが調整してちょうど良い速さで閉まるようになった。
「ここに調整ダイヤル1と2があるよね。1は90度から15度までの閉まるスピード調整。2は15度から0度までの調整。」
--そういえば僕のアパートの部屋にもドアクローザーがついているはずだ。
家に帰って確かめてみようと思った。
僕と趙さんの仕事が終わりかけると、さっきの「ドアの閉まる音がうるさい」といっていた職員が
近づいてきてドアの開閉を確認すると言った。
「さすがプロね。もっと早く言えばよかったわ」

それから午後の仕事は今日は5Fのフィルター清掃。
趙「エアコンのフィルターを定期的に清掃しないとフィルターが詰まって冷暖房の効きが悪くなる。」
フィルターをはずして来て水洗いして乾いたら元に戻す。
--僕の部屋も、実家もそんなことしたことない。帰ったらドア・クローザと一緒に調べてみよう。

吉沢係長の机の上の電話がなる。
そして係長は指示を出す。昨日から見てきて、どうやら係長は技術屋さんでなくて事務専門のようだ。
だから設備の実務は加藤さんと趙さんでやっているのだ。
で、電話がなったときに僕しかいなかった。
「4Fの男子トイレの水が止まらないらしい。金田君、見てきてくれるか?」
(--ふっ、ふっ、トイレの水が止まらないのは昨日やっていますよ)
(必要なものは、ピストンバルブとマイナスドライバーとモーターレンチ(イギリスレンチともいう)を用意して向かった。
4Fのトイレに行ってみたが、どれも”流れっぱなし”ではない。
ふと、手洗いをみると水がちょろちょろ流れている。水栓を最後まで閉めてみたが本当に止まらない。
--これのこと?できねー
部屋に帰って趙さんがいたのでその旨伝えた。
「コマの下に塵がつまっているか、コマが劣化しているか、スピンドルが磨り減っているかだね」
趙さんは材料の棚からコマ(節水コマと新品のスピンドル(ねじ切りしている棒)と工具を取り出した。
ぼくはただ着いていくだけ。
「ここにバルブがあるんだよ」
と手洗いの下の壁に着いているパネルをはずし、バルブを見せてくれた。
たしかに、手洗いの水栓を交換するにはもっと元で水をとめなくちゃね。
でも、こんなところにバルブがあるなんて普通の人は知らないよ。
趙さんが水栓のスピンドルとコマをはずし、新品と交換するとちょろちょろ流れていた水は
ピタッと止まった。
-----------
その日、僕は家に帰って入り口のドアをゆっくり見た。
確かにドア・クローザーがついていて、速度調整のねじをいじってみると早く閉まったり
遅くなったりする。今まで、閉まる音がうるさくて、最後までノブを持って静かに閉めようと努力していたのは何だったのか?
エアコンのフィルターもはずして見たら、埃で真っ白だった。職場で教わったように水で洗った。エアコンの効きが明らかに違うような気がした。

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