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2009年12月21日 (月)

物語(15)--ホームレス?

ある日、乞食(という言葉は昔聞いた。今では死語?(差別語?=言い換えは物乞いかも)が話には聞いていたが本当に逢ったのは初めてだ)
が僕のアパートの入り口を叩いた。
(乞食=今の言葉でホームレスなのだろうが、ちょっと違うかも。)

僕のアパートのドアをノックするのはたまの宅配便くらいなので開けてみただけなのだけど。
開けたとたん、悪臭が漂っている。
何年も風呂に入っていないにおいかも。

そのホームレスは言った。
「旦那さん。すみませんが、ご飯の残りがあったら少し分けてくださいませんか?」
と、一部欠けた拾ったような器を差し出した。
ご飯の残り?あったような気がする。
でも・・・

数秒の間に僕の中に何かのイメージがひらめいた。
「ちょっと間違えていれば僕もホームレスになった。そして食べ物にあぶれたらこうしたかも知れない」
僕は悪臭のするその人、だけどちょっと瞳が綺麗な人をを無碍に断れなかった。

僕は言った。
「ホームレスはわかるけど、ずっとそのままでいいの?とりあえず体臭いよ。
それじゃ死ぬまでずっとそのままだよ。ウチの風呂に入っていかない?」
何ということを言ってしまったのか、と僕は咄嗟に思ったけど、
何故かその時は「加藤さんならこう言うかも」なんて考えてしまったんだ。
そんなことを考えているとその乞食というかホームレスはポロポロ涙を流していた。
これはもう、言ってしまった以上、断るわけにはいかない。
でも、この人を僕の部屋に通したら、部屋中が悪臭になってしまう、と思った。

「だけど、ごめん。風呂が沸くまで外で待っていてもらっていい?」
ホームレスは何回も頷いていた。

いや~、見ず知らずの人を風呂に入れのは、(って特にホームレスのような怪しい人を)勇気がいるよな。
と思いながら風呂を沸かした。

何かの本で、読んだことがある。
半年間、風呂のない国を旅した人は、帰国したらまず1回風呂に入ってざっと汚れを落とし、
もう一度、入ってしっかり風呂に入るのだ、と。

しばらくして風呂が沸いた。
僕は部屋の中にいたので、彼が外でずっと待っているかどうか判らなかったけど
ドアを開けると彼がそのままいた。

問題は着る物だ。せっかく風呂に入って悪臭のするそれを着たら何にもならない。

一応、体形は僕とそれほど変わらない。だから数時間、僕のを貸してあげてもいいかな、なんて
思ってしまう僕は甘いのだろうか?(だけど加藤さんならそうするかも)
ということで、風呂上りにはこれを「着なよ」って僕の下着を用意した。

で、彼の着ているものをウチに持ち込まれては、部屋に悪臭が漂うので
「外で全部脱げる?着替えはとりあえず僕のを貸すから、それを洗いおわるまで脱いでくれる?」

彼は、そのまま従った。(って、ドアの外で全部脱ぐか!?)
全部脱いでしまった彼を、風呂に通した。

シャワーの音やら石鹸を取り出す音が聞こえるけど、彼は何を思いながら風呂に入っているのだろう。
僕はその間、彼のあまりにも悪臭の服を洗濯機に入れて洗濯した。
洗濯して思った。「これ、すぐには乾かないよな~。濡れたまま返す?」かどうか。

30分後、僕の下着を着た、”悪臭のホームレス”でなくて、普通の男性が風呂から出てきた。
(結構、いい男じゃん。なんでホームレス?)
と思ったけど、僕はさっき書いたように、長期の海外旅行をしたあとは
2回風呂に入る、というのが頭に残っていたので「もう一回風呂に入ってください。その間に
少し髪の毛を切らせてもらっていいですか?」と言ってしまった。
だって、風呂から出たら、髪の毛と髭以外は”普通の人”だけど、
容姿はそのままだと、またホームレスだから。

彼は言った。
「ずっと床屋にいく金がなかったんで・・・」
それは僕も同じだ。だから自分の髪の毛は自分で切る。
そういう意味では髪の毛を切るのは未経験ではないのだ。

2回目の風呂を沸かす間、僕は床屋よろしく、彼の髪の毛を結構バサバサ切った。
いや~、整髪するとかなりいい男になってる。

2回目の風呂が沸いた。
「さっきのは汚れを落とすため。次はしっかり垢を落としてください。髭も剃ってね」
というと、彼はまた30分くらい入っていた。

髪の毛を切って髭を剃った風呂上りの彼はとてもホームレスと思えない素敵な男性だった。
どうしてこんな人がホームレス??

って違う!この人は最初に「ご飯ください」って言ったのを思い出した。
「お腹、空いているんですよね?今すぐチャーハンを作ります」
って、「チャーハンの素」しかないけど、この人には構わないかな?と思った。

で、僕はチャーハンを作った。

(*著者注
 ある程度、ご飯を温めた後でチャーハンの素を使うのはご飯のパラパラ感を作るのに効果的ですが
 基本はご飯です。「焼飯」は中国で、冷えた&古くなったご飯を食べなおせるために作られたものが起源だと思いますが、今の時代にあっては
 冷えたご飯は電子レンジで暖めて卵をまぶしてから
 中華なべ(なければフライパン)で炒めた方が美味しいです。)

 風呂上りの彼は、男の僕から見ても”かなりいい男”だ。
 僕は食事を勧めた。
 「お腹が空いているようだけど、今はご飯しかないからチャーハン作ってみたよ」

 彼は貪るように食べつくした。
 それをみた僕は、冷蔵庫の中に残っていたウィンナとか漬物の残りとか出したら
 それも食べつくした。よほどお腹が空いていたのだろう。

 それは良いけど、彼の服が乾くまで(今日は晴れているから3時間くらいで何とかなるか?)
 ここに留まってもらうしかない、というのが僕の悩みだった。

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