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2009年12月25日 (金)

物語(16)--ホームレス(続き)

そんな僕の心配を察してか、彼は言った。
「ここにいてはご迷惑でしょうから、あとで洗濯物取りにきます」
と、出て行った。

確かに、見ず知らずの人がこの部屋にいては困るよな~。
でもどこへ行くんだろう?
どうせ行くところなんかないんじゃないの?

僕は考えた。
あのきれいな瞳をした人は良い人かも知れない。
何かの事情でホームレスになったんだ。
って、ホームレスになる人はみんな事情があるのだろうけど。
これから彼はどうするんだろう?
何か資格でもあればウチの会社に入れるかも。
って、いつのまにか「ウチの会社」って言っている自分にも気づいてしまった。

ホームレスになるくらいだから何も資格持っていないんだろうな。
でも、加藤さんに相談してみれば何とかしてくれるかも。
なんて考えながら、僕はそれから3時間後、洗濯物をみたらまだ少し乾きが足りなかった。
4時間後--もう少し。
そして5時間後、もう夕方だが、乾くタイミングを計ったように彼が来た。
ぼくは言った。「たぶん洗濯もう乾いているよ」

彼「本当にありがとうございます。着替えたらすぐに出て行きますので」
洗濯物を渡すとすぐに彼は着替えた。
「本当に、こんなに親切にしていただいたことはありません。
ありがとうございました。」
出て行こうとする彼を僕は止めた。
僕「ちょっと待って!これからどこへ行くの?」
彼「今までもどこかの公園で寝泊りしていましたので」

僕は彼に待っていてもらって加藤さんに相談のTELをした。
加藤さんと出会わなければ僕が彼のようにホームレスになっていたかも知れないから。
その僕を助けてくれたのは加藤さんだから、加藤さんなら何とかなるかも知れないとおもったんだ。

加藤「どうした?」
僕「ウチの会社、今、求人募集してないですか?」
加藤「いい人ならいつでもOKだよ」
僕「今、一人となりにいるんですけど、これからお伺いしても良いですか?」

加藤さんは快く引き受けてくれた。
そして僕は彼を連れて、加藤さんの家におじゃました。

加藤さんの家に入った途端、驚いた。
テーブルの上に料理が用意されていたから。しかも
僕「えっ?鍋とマーボー豆腐と八宝菜!?」
加藤「いやー、時間がなかったからすぐそこのスーパーで材料買ってきた。餃子つくってあげたかったけど、時間がなくてね」
僕「いや、ご馳走になりに来たのでなく、紹介に・・・」
加藤「まあ、ゆっくり呑みながら話そうよ」

(著者注:マーボー豆腐はすぐに作れますが、まともな八宝菜は結構、下味をつけるのが大変です。だからこの話では餃子まで手が回らなかった訳です)

また僕は思った。
「加藤さんってどんな人なんだろう?」

ホームレスの彼は酒を勧められても最初は呑まなかった。
でも、加藤さんが3回ほど勧めると呑み始めた。
そして過去を語り始めた。

彼は、夏は田舎で農業、そして冬は東京の、冬季だけ暖房用ボイラーを使う会社に出稼ぎしていたという。
(だからボイラーと危険物の免許は持っている。ビル管には役立つ)
その会社が倒産して、郷里に帰れなくなったと・・

それから、加藤さんはいろいろ彼の経歴やら今の境遇についてのことを聞いていた。
彼の名前が西郷さんということも初めて知った。

加藤さんがほろ酔いになったころ、西郷さんに言った。
「明日からウチの会社に来てみるか?」
僕はよく見ていなかったけど、西郷さんの目からは涙が流れていたようだ。

僕は違うことを考えていた。
会社には明日から行けるとして、住む場所はどうするのか?

加藤「住むところが決まるまで、狭いけどここに寝泊りするか?」

僕は話の成り行きが全く信じられなかった。
で、加藤さんってどんな人??

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